2006.4.15

民権23号 4月15日

23−1
 弓矢人権裁判判決
名古屋高裁、県に一審を上回る賠償命令
     全体として相当の前進を勝ち取った

居住地での発言を三重県教委や解同から一方的に「差別」と断定され人権侵害を受けたとして三重県立高校教諭だった弓矢伸一氏が、県や解同幹部などを訴えた控訴審判決が三月二十日、名古屋高裁であり、熊田士朗裁判長は県に三百三十万円の損害賠償を命じ、一審に続き原告勝訴の判決を言い渡しました。
 三重県立松阪商業高校に勤務していた弓矢氏が、一九九九年、住民と交わした会話を三重県教委や解同、同和教育推進教員らが「差別」発言だとして「反省文」を強要しました。これに対して弓矢氏は、「確認・糾弾会」でつるし上げたとして県と解同幹部を訴えたものです。弓矢氏に対する人権侵害、解同の「確認・糾弾」路線、三重県の同和行政・教育などの違法性が争点となっていました。
 判決の中で裁判長は「自分を見つめて」という反省文に関し、「原告の意に反して応じざるを得なかった」と指摘し、同文書を地域に配布した行為を違法と認定。弓矢氏の訴えを認め、県と解同側の控訴を棄却しました。しかし、解同への損害賠償は認めませんでした。
 原告弁護団の石川元也弁護団長は判決後の報告集会で「判決は、不十分さはあるが全体として皆さんとたたかった成果として、相当の前進を勝ち取ったと評価できる。この判決を運動の力でいっそう前進させていただきたい。」と述べました。
 報告集会の最後に、弓矢伸一氏が弁護団と支援者へお礼をのべるとともに、引き続き、人権と教育を守るため奮闘する決意を表明。参加者から弁護団と弓矢氏に対し大きな拍手がおきました。
 三重県の上告にともない、原告側は四月三日最高裁に原告敗訴の部分について上告しました。

23−2
 府教育長が学力調査問題で謝罪
     解同からの要請でデータを渡した

(民権連) 府教委が繰り返し民権連をだましていたことについて。(平成十五年調査で府教委は府人権協会に住所データの判定をさせ、対象地域児童生徒の学力・生活調査の集計まとめを秘密裏におこなっていたにもかかわらず、今日まで府民にひた隠しにしてきたこと。)
(教育長) 平成十五年調査について機会があったにもかかわらず、民権連のみなさまには十分に説明ができなかった。申し訳ございません。

(民権連) 謝罪になっていない。民権連との関係についてどうするつもりか。真摯に話し合いするつもりはないのか。
(教育長) 誠意を持って対応しなければならないと考えている。誠に申し訳ない。部下にも言っておく。

(民権連) 国は来年に学力調査を実施する予定、府はこのときにはしないのか。
(府教委) 実施する。

(民権連) なぜ国の調査にあわせなかったのか。
(府教委) 府教委が決めたときは国がまだ方針がでていなかった。

(民権連) なぜ同和調査をするのか。
(府教委) 平成十三年の答申に課題が残されている。

(民権連) 同和問題解決のための教育の課題は何か。
(府教委) 差別を許さないこと。一人ひとりが自分自身を大切に生きていくこと。仲間とともに生きる、ともに生きる。それぞれさまざま課題がある。

(民権連) この課題は同和地区の子どもだけではない。
(府教委) (黙ったまま)

(民権連) この調査で何を明らかにしたいのか。
(府教委) 状況がどのように変化しているか。一般施策がどのような効果が上がっているのか。

(民権連) 一般施策とは何か。
(府教委) 児童生徒支援加配が旧同和校でどのように変化しているか。

(民権連) 二〇〇〇年調査の時でも地区外からの流入が五〇〜六〇%と言われている。その後住宅家賃の変化や入居方法が変化する中でもっと流出入が増えている。これでも同和問題の実態把握になるのか。
(府教委) 変わっていると言うことは事実。しかし、平成十三年答申で様々な課題が集中的に現れている。こういう捉え方が必要と指摘されている。

(民権連) 集中的に現れている地域は一般地域にもある。対象地域とされている地域だけが同和問題なのか。
(府教委) (黙ったまま)

(民権連) 地区内に居住している子どもがすべて同和地区の子どもか。
(府教委) そうではない。
(民権連) 四月に対象地域に引っ越してきた人もこの調査の対象児童生徒になるのか。
(府教委) それも含めて同和問題である。

(民権連) 最近、解同の役員や収入の多い人が地区外に出て行ってる。この人たちは同和問題とは関係ないのか。
(府教委) 地域外に出て行っている人は同和問題とは関係がない。

(民権連) ここが同和地区だと特定することはいいのか。
(府教委) そこの地域が同和地区と特定するのは間違い。そういうものは誰も持ってはならない。

(民権連) 人権室が持っているではないか。
(府教委) (黙ったまま)
三ぺージへつづく

23−3
(民権連) 調査結果に個人の名前は出てこないが、結局、個人を地区住民であるかないかをより分けることになる。いつまで同和地区住民扱いをするのか。
(府教委) AさんBさんを認定・判定するのではない。

(民権連) これまで府は、地区住民であるかどうか行政が「認定・判定」すれば差別になると言っていた。今回は差別にならないのか。
(府教委) 差別にはならない。

(民権連) 何のために調査をしたのか。
(府教委) 政策改善のための内部データ。

(民権連) このときは人権協会に住所データを持ち込んでいるが、その根拠は。
(府教委) 二〇〇〇年調査の時に対象地域かどうかを判断してもらった。これまでの経緯があって人権協会にお願いした。

(民権連) 人権協会が「認定・判定」する権限とその根拠は何か。
(府教委) 根拠はあると考えている。

(民権連) それは何か。 
(府教委) (黙ったまま)

(民権連) 運動団体に情報を渡していた。しかもそれが公表されている。これについて府教委はどう考えているのか。
(府教委) 解同から要請されていたので渡した。

(三月二十九日におこなった、民権連と府教育長との交渉より) 
   三月十八日付、しんぶん赤旗より

23−4
 子ども・府民の人権をふみにじる、
  「学力テスト」の名による「同和」調査の中止を

学力テストのなかで
 旧「同和地区」調査が

 大阪府は、全国に先駆けて4月から5月にかけて、府下いっせい(大阪市を除く)の「学力テスト」(学力等実態調査)を、すべての公立小学校6年生と中学校3年生を対象に行うとしています。
 学力調査をすべての子どもを対象にして行うことは、すでに多くの教育関係者が厳しく批判しているように、学校間競争をあおりたて、競争主義をいっそう極端にするものです。
 こうした調査を学校に押しつけるべきではなく、学力調査を行うのであれば、関係者が指摘しているように抽出によるもので十分です。
 しかも、府が学力調査のなかで、旧「同和地区」の子どもの学力・生活調査、保護者調査の結果を抜き出して集約しようとしていることが、関係者の追及のなかで判明しました。さらに、前回(2003年)学力調査のときにも、府が同様の
「同和」調査を行った事実も明らかになっています。
 子どもや保護者、教職員が知らないところで、こうした調査が行われ、これからも行われようとしていることに対して、府民と関係者から驚きや怒りとともに、厳しい批判の声があがっています。
 私たちは、なによりも子どもと府民の人権を守り、子どもの人間的成長と発達を願う、憲法と教育基本法を守る立場から、この問題を重視する必要があると考えています。

 「個人の尊厳」ふみにじる 人権侵害

 この問題が重大なのは、府が調査の対象を旧「同和地区」の子どもと保護者にしていることにあります。
 すでに関係者が指摘しているように、「同和地区」は実態としてなくなっており、「同和地区」を指定する法的根拠もありません。にもかかわらず旧「同和地区」に住んでいるとして、その子どもと保護者を調査の対象とすることは、行政によ
る新たな差別づくりであり重大な人権侵害です。「法の下の平等」や「個人の尊厳」をうたった憲法・教育基本法の原則を踏みにじるものです。
 こうした調査は、教育行政として絶対にやってはならないことであり、府と教育委員会は、この調査が子どもたちと教育にとって深刻な悪影響をおよぼすことを自覚すべきです。
 私たちは、あらためて学力調査の名による「同和」調査の中止を要求するとともに、市町村や学校に押しっけることをやめるよう厳しく求めます。

 大阪府・市議会での
  日本共産党議員団の論戦から

 2006年度予算案が審議された大阪府・大阪市議会で、日本共産党議員団が本会議や委員会で、今回の「同和」調査の問題点を明らかにして質問、重要な答弁を引きだしています。
 大阪市議会文教経済委員会では、関根信次議員が「旧同和地区の調査はするべきではない」と追及。市教委は「旧同和教育推進校の児童・生徒だけを対象とした学力等実態調査は実施しません」と答弁しました。
 この答弁の背景には、芦原病院問題など市の乱脈・不公正な「同和行政」にたいする広範な市民の批判と党議員団の一貫した追及があります。
 一方、府議会教育文化常任委員会で阿部誠行議員は、府の「同和」調査は市町教育委員会への「依頼」としていることから「拒否することができるのか」と質問。府教委は「理解と協力を求める」と述べるにとどまり
調査を強制するとは言えず、市町の対応を尊重する姿勢を示しました。
  五ページへつづく

23−5
 大阪府と「解同」
 の癒着にメスを

 この間題の根本には、府と「解同」(部落解放同盟)の癒着という問題があります。
 今回の「同和」調査については、「解同」系の「解放共闘」が要求し、府が「調査の必要については認識している」と回答していたことが、関係者により明らかになっています。
 府が「同和事業」(28事業に18億円以上)を継続、「解同」系団体の「研修」に庁内あげて参加し、同団体に多額の補助が予算化されていることが、党府議団の調べでわかりました。
 こうした事実から、今回の「同和」調査は、「同和」利権の温存を狙う「解同」の要求に応えるものであることは明白です。
 府と「解同」の癒着にメスを入れ、いまだに行われている一般施策の名による「同和事業」「同和教育」を終結させるべきです。
 子どもと府民の人権を踏みにじる「同和」調査は、道理がまったくないだけに、府民との矛盾、行政内部の矛盾も大きいものがあります。理不尽な調査をやめさせるために、関係者の取り組みとともに府民的な運動が今求められています。

(こぼやしひろかず・日本共産党大阪府委員会学術文化委員会副責任者)
  四月九日付大阪民主新報より

 人権擁護法案の提出断念
   法相が閣僚懇談会で報告

 杉浦正健法相は四月七日の閣僚懇談会で、人権擁護法案について「今国会も提出できる状況にない。断念せざるを得ない状況だ」と報告しました。法相が記者会見で明らかにしました。
 法相は、今国会提出を断念した理由について「与党、特に自民党の議論がほとんど進んでおらず、(提出は)不可能と言わざるを得ない」と説明。法務省内に法相直轄の検討チームを発足させ、これまでの議論の論点整理を行った上で、与党側と調整して次期通常国会への提出を目指す考えを示しました。
 また、メディア規制条項に関しては「正式にマスコミ各界と相談して協議の場を設け、十分意見を聞いて検討していきたい」と述べました。

  宅老所「和氣愛々」、医療生協長瀬支部
 “満開の桜をたんのう”

  宅老所「和氣愛々」と医療生協かわち野長瀬支部は共催で陽春の四月八日、金岡公園で“お花見会”をとりくみ二十六人が参加しました。
 当日は朝から季節風が強く、時折、突風が吹く荒れた天候になり、参加者の多くが高齢者のため危ないと判断し、「和氣愛々」内で弁当を食べたあと車に分乗して金岡公園に向かい、公園内を散策し、咲き誇る桜の下で記念写真、そのあと「和氣愛々」に戻り和やかに懇談して楽しい時間を過ごしました。
 「こんなに金岡公園が桜できれいとは思わなかった」「弁当が豪華でおいしかった。それだけに桜の下で食べれたらもっとおいしかったのに残念やわ」「公園には何回も来てるけど、桜の時期にこれだけ人で一杯になるとは知らなかった」と談笑していました。 

23−6
 大阪市が文書回答 (上)

 一月二十六日、大阪市に提出した「市民にあたたかい公正・公平な行政の確立を求める要求書」の文書回答のうち、二、特別行政を完全に廃止すること。三、行政による「人権教育・啓発」を行わないことの箇所を掲載します。 

二ー@ 市営住宅の適正な管理、芦原病院の見直し、共同浴場の自主運営、未利用地、駐車場の厳正な管理運営、事業の収束など、平成十四年三月議会で採択された付帯決議を遵守すること。
回答 家賃については、平成十年度の応能応益家賃制度を導入し、六年間の傾斜措置を講じていたが、平成十六年度から一般家賃に移行している。管理については、平成十四年六月から一般向け住宅と同様に住宅管理センターで一括して管理を行っている。入居方法については、従来の優先入居を公募方式に改めている。また募集対象区域については、平成十四年十一月から、校区単位での募集を実施しているが、平成十七年十一月には、西成地区において行政単位の募集を実施したところである。
回答 芦原病院については、平成十四年度を初年度とした抜本的な経営改善に取り組んできた。当初の目標のとおり、平成十七年度は、新たな貸付金の発生をなくすこととし、予算の計上及び執行をしていなしい。
回答 共同浴場につきましては、平成十六年度にすべての補助事業が終了し、現在地域において自主運営・自主管理いただいております。
回答 未利用地については、売却すべきもの、事業化を図るもの、あるいは転活用を図るものへの精査を早急に行う。
回答 駐車場の管理運営については、収入確保の観点から検討する。 
回答 同和対策事業は、一部経過措置があるものを除き廃止した。

二ーA 塩楽荘の運営補助金をはじめ人権協会への補助金を廃止すること。
回答 塩楽荘は、老人休養ホームとして、「高齢者に対して低廉で健全な保健休養のための場を与え、もつて高齢者の心身の健康の増進を図ることを目的」として設置されており、多くの高齢者に利用されている。
塩楽荘の管理運営について、施設のより一層効率的な運営と高齢者の保健・休養施設として最大限の効用を発揮できるよう、平成十八年度から指定管理者制度を導入することとし、指定管理者について選考を行った結果、社団法人大阪市人権協会を指定管理者として選定した。今後、一層の高齢社会の進展が見込まれる中、高齢者・市民の方々に幅広く利用していただくとともに、より一層、施設の効率的・効果的活用に努めてまいりたいと考えております。

二ーB 人権文化センターの夜間警備など人権協会への不透明な委託契約を見直すこと。
回答 人権文化センターにおいては、これまで、夜間及び休日について、有人による警備を実施してきたが、平成十七年度より、人権文化センターの効率的・効果的な管理運営を図る観点から、すべての人権文化センターへ機械警備を導入した。また、十八年度から、市民サービスの向上を図る観点から、年末年始をのぞくすべての日曜、祝日についても、開館することとしている。

二ーC 住宅管理は、人権協会の介入を廃し、市が責任を負って管理すること。そのためにも管理運営に関わる人権協会への委託契約を止めること。
回答 ふれあい人権住宅の管理業務については、一般住宅と同様に住宅管理センターで実施しているが、ふれあい人権住宅の入居者の中には高齢の方や読み書きが困難な方が多く、各種申請にかかる相談などの支援が必要であることから、一部の業務について、大阪市人権協会に委託しているところである。

23−7
二ーD 地区内に設置された駐車場の駐車可能件数と実際の使用件数及び使用料を地区別に明らかにするとともに、人権協会からの徴収額を明らかにし、適正に改めること。
回答 未利用地を使用した一般駐車場は、平成十六年度末現在、収容台数一三七三台・契約台数八百十五台・使用料は、平均で約一万七千円となっている。ふれあい人権住宅付帯駐車場は、平成十六年度末現在、収容台数五千百八六台・契約台数三千三百八十二台・駐車料は七千円となっている。
回答 平成十六年度の駐車場収入は、約四億三千六十二万八千円で、その内本市へは、約五千五百五十七万五千円納付されている。なお、ふれあい人権住宅付帯駐車場は、今年度から十九年度までの三年間で一般向け住宅と同様の使用料金となるように移行中であり、市への納付金についても、この使用料の改定に合わせて、増額に努めていく。

二ーE 芦原病院への貸付金を返済させること。
回答 芦原病院は、昭和四十五年、大阪市同和地区医療センターとして位置付けられ、地域住民の医療を確保するとともに、多くの市民が利用し、積極的に地域の公衆衛生活動にも取り組んでいる実態を踏まえ、その公的役割を果たすうえでの不採算医療等に対して補助金や貸付金を支出してきた。一方、芦原病院を運営する浪速医療生活協同組合は、医療の存続を目的とし、昨年十二月、大阪地方裁判所に民事再生手続開始の申立を行い、再生手続の開始が決定されて。本市としては、新たな公金の支出を一切しないという方針のもと、今後とも医療が円滑に提供されるよう対応していく必要があると考えており、裁判所を介した手続となるが、市会の意見も受けながら、適切に対応してまいりたいと考えている。

二ーF 地区内のすべての公共事業の同建協会員優先発注を止め、厳選な入札制度に改めること。
回答 平成十七年十月三十一日の大阪市入札等監視委員会の緊急提言において、地域要件を緩和し、指名における恣意性を排除するため、行政区を最小単位とする意見を受け、また、入札契約適正化法の適正化指針においても、指名にあたっては過度の地域要件の設定とならないよう指摘もあることから、指名にあたっては行政区を最小単位とする旨を定めた「工事請負入札指名基準の取扱い」を平成十七年十一月十一日に公表し、実施しているところです。
二ーG ふれあい人権住宅の一般公募を一日も早く実施すること。
回答 平成十四年三月の「地対財特法」の失効に伴う、同和向け住宅の入居者選考方法については、「公営住宅法第二十五条の規定に基づき、住宅に困窮する実情に応じて行う」とする国の通達に基づき実施している。このため、ふれあい人権住宅の入居者選考に際しては住宅に困窮する実情をあらかじめ調査の上、住宅困窮度の高い世帯に倍率優遇を行い、公開抽選により決定することとした。
回答 ふれあい人権住宅の募集対象区域については、平成十三年の本市同推協の意見具申や、「同和問題解決に向けた実態等調査報告書」で示された差別の現状なども踏まえ、地域交流のコミュニティの有効な単位として、平成十四年十一月以降、校区単位での募集を実施しているが、平成十七年十一月には、西成地区において行政区単位の募集を実施したところである。
 
二ーH 人権文化センター内にある解放同盟支部事務所を撤去させること。
回答 人権文化センターに入っている運動団体の事務所については、現在、十カ所のうち一カ所が、本年一月末をもって移転した。また、別の一カ所についても、本年夏頃を目途として移転を予定していると聞いている。運動団体の事務所については、歴史的経過があるというものの、公共施設の中に運動団体の事務所が入っているというのは好ましいとはいえず、早急に問題の解決に向けて、鋭意努力してまいりたい。

23−8
 「人権教育をひらく
   同和教育への招待」を切る(最終回)
               亀 谷 義 富

 最後の九章は「人権教育の展望と日本における課題」と題されたものである。森実氏が書いている。

 部落解放運動とは何かが 分かっていない 

 二一六頁で、森実氏は、本書で述べてきたような変化をひとことでいえば、部落解放運動における「補償から建設へ」という変化に対応する教育面での変化だということができる。と述べて、部落解放運動というのは、二一七頁で、「差別事件や生活全般の不利益に対する精神的補償・物質的補償に取り組んできた。」 運動だと述べている。部落解放運動とは、一口で言うと、部落問題の解決をめざす運動だったのである。補償してくれという運動ではなかったのだ。「俺たちは、物取りをするために運動をしてきたのだ、部落解放とは、部落を売り物にして、金儲けをする運動なのだ。」という解同の活動家と交流してきた森実氏だから、補償の運動などと考えるのだろう。 
 では、「建設」というのは何かと言えば、二一七頁で、「これからは人びとの間に見られるさまざまな差別的・抑圧的関係全般を問題ととらえ、部落内外の交流をはじめ、差別のない水平な関係作りをめざす活動を進める。」ものだとしている。教育ではというと、同じく二一七頁で、「部落問題以外の様々な問題を織り込んだ人権学習を創造する。」とある。つまり、あらゆる差別の問題に取り組むことが「建設」の中身なのである。
 森実氏は、冒険心型の人権教育、同和教育なるものを提示する。二二〇頁で「部落のなかにも、生い立ちや経験から部落差別と自己の関わりを見い出しにくい子どもたちが増えている。これは、これまでのさまざまな取り組みの成果である。そのような子どもたちにとっては、自分のやりたいことにチャレンジしていく生き方こそふさわしいのではないか。自分の世界を広げていって、もしその中で差別に出会ってしまったら、そこから部落差別にあらためて取り組むという方向である。」
 一体これはなんだ。行政と解同が部落差別を残そうと「努力」しても、部落差別問題は直実に解消されてきているのだ。だから子どもたちは、部落問題は関係ないと言うのだ。同和教育をやめればよいのである。やめたら大学での森実氏の存在自体がなくなるから、冒険心型教育などというものを提案しているにすぎないのである。その中身とは何なのかというと、二二二頁で、個々人は多様な特徴をもっている。一人の部落出身者は、同時に男性であったり、障害をもっていたり、子どもであったり、さまざまな立場を同時にもっている。部落出身ということでは「差別される側」であっても、男性ということでは、「差別する側」であったりする。一つの差別問題や一つの権力関係の軸だけでは状況をとらえきれない・・などという差別問題の拡散化なのだ。行き着くところは、個々人の心の問題とならざるをえないのだ。差別問題の解決は、心がけである。人権教育とは、心がけの教育というわけだ。かくして、森実氏は自己回復力(レジリエンス)なるものを持ち出すのだ。
 最後に森実氏たちに言っておきたいことがある。部落問題の解決を阻んでいるものは、同和利権に群がる解同幹部と行政幹部、それから森実氏のような解同御用学者であることを。